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カラスキーしのゆうじょう

犂氏の友情

久生 十蘭

「オール讀物」1939(昭和14)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,312 字 · 27 页

青空文庫

たしかにこれは意外だったので、いよいよもって度胆を抜かれた。

カラスキーは、そういう微妙な薄笑いをしながら、れいによって、非凡な四白眼でこちらの眼の中を覗き込みながら、

「すると、ムッシュウ・ヤマカワは、だいぶ恐慌していられるのでしょうね」

どうも、話がだいぶ喰い違ってきた。有体に白状すべきかどうか、さんざ迷ったすえ、とりあえず、こんな具合に当り触りのないことを言ってみる。

「ええ、どうも、それがねえ、いっこう、とりとめがなくて」

カラスキーは、肱をとって、ゆっくりと隅のほうへ連れて行き、そこの椅子に掛けさせると、隠したって何もかも先刻ご承知だという顔で、

「わかっています。相当念入りにやったつもりですから、おそらく、先生は慄え上っていられるでしょう。……わたくしはムッシュウ・ヤマカワが道徳社会学を専門にやっていられる篤実な学者だということをよく知っているんです。……ところが、どういうものか、先生は、たいへんに悪党振られる。すっかり悪徒気取りで、去年の三月には、国立割引銀行の使童を襲って三千法ばかりせしめたの、体育場の出札嬢を威して有金残らず頂戴してきたことがあるのと途方もないことを言われるのですな。