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いぬがなくとガラスがこわれるか

犬がなくとガラスがこわれるか

中谷 宇吉郎

「暮しの手帖 昭和36年第3号」暮しの手帖社、1961(昭和36)年7月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,337 字 · 41 页

青空文庫

たいへんむつかしいことのようであるが、平たくいえば次のとおりである。

まず因果律から説明しよう。

われわれは、日常よく「何々だから何々になった」という表現を使う。はじめの何々はいわゆる原因であり、あとの何々は結果である。何か、こと、すなわち結果があると、その原因を考える。茶わんが割れたのは落したからである。昼のつぎに夜がきて、また昼がくるのは、地球が廻っているからである。こういうふうに、原因があると結果がでてくるという考え方を、因果律という。原因結果の法則ともいわれているものである。

つぎに、分析と綜合という方法であるが、これもわれわれが、日常しじゅう使っている考え方である。自然界にあるものは、いろいろな性質の組合せから成っている。それを一度に見たのでは、なんのことかわからなくなるので、性質の一つ一つを分けてしらべてみる。

たとえば、ここに一つの壺があったとすると、まずその形はどうか、目方はいくらか、釉薬はどうか、色は……というふうに、各性質に分けて、そのひとつひとつについてしらべる、これが分析である。そしてその分析によって得られた知識をまとめたもの、すなわち綜合したものをもって壺全体の性質とする。