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いぬがなくとガラスがこわれるか
犬がなくとガラスがこわれるか
中谷 宇吉郎
「暮しの手帖 昭和36年第3号」暮しの手帖社、1961(昭和36)年7月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,337 字 · 41 页
そんな大土木工事ができるようなら、われわれ人類よりも、もっと高等な生物であろう。高等な生物ならば、頭脳が発達しているにちがいないから、頭は大きいであろう。そしてなんでも機械でやるだろうから、手足は退化していると考えられる。食べものなども、消化がよくて栄養価の高いものばかり食べているから、胃や腸は簡単な構造のものでよかろう。したがってお腹も、地球上の人間のように、太いずんどうになっている必要はない。こういうふうに考えたあげく、火星人という生物を想像した。
こういうふうに、いろいろ尾ひれがついて、そのほうが大きくなってしまったが、もとを正せば、まっすぐな線が見えたというだけのことである。その線自身も、その後の観測では、あやしくなってしまった。それにしても、火星人の唯一の根拠が、火星のスケッチ一枚だったということは、ちょっとおもしろい話である。通俗科学の知識が、ときには、フィクション以上のフィクションである場合もある。このごろ大流行の宇宙旅行の夢の中にも、これに類したことが、たぶんあるであろう。
地球上の話にもどって、川が曲っているところでちょっと注意してみると、いつでもカーヴの外側の岸近くは、内側の岸近くよりも、水がはやく流れている。