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こぶ

犬田卯短編集 一

犬田 卯

犬田卯『犬田卯短編集 一』。同一底本的分册已合并为一书。收入:瘤、米、橋の上。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 48,259 字 · 96 页

青空文庫

」

全く呆れたことに、その体温計が小綺麗な箱へ入って配給されて来ていた。それは農村人への衛生思想注入のため、どこか厚生省あたりの肝煎りで、特に組合が実行したに相違なかった。

「体温計ってみたところで、稲は育つめえで」と一人が言って、浩平に話しかけた。「なア、よう、台の親方。」

「うむ、そうでもあるめえで」と浩平はそこにあった椅子へ腰を下ろしながら答えた。「田の体温でも計って報告したら、そのうちに、それ、何とか、その方の医者様がかけつけてくれべえから。」

「農学博士がか。」

「うむ、まァその博士なら、これで、無肥料で増産ちう一挙両得の方法も教えてくれべえからよ。」

「それもそうだっぺけんど、これで人間の方の温度も計る必要があっぺで。みんな、はア、肥料肥料で逆せ上っていっからよ。いい加減のところで血圧下げてもらアねえと、村中みんな脳溢血だなんて……」

「ところがどうも、その血圧、上るばって下りっこねえ。どうだ、今の電話きいてみろ。」

奥の部屋で、なるほど電話している組合事務係のだみ声がしている。

「……うむ、そんな訳では……なるほどな……うむ、なアる……全く、どうも、いやはや……全くこれ困っちまアな。