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たぬきとムジナ
狸とムジナ
柳田 国男
「上毛の民俗」煥乎堂、1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,460 字 · 13 页
どこかで誰かがそういっているということには、幾つかの原因が考え得られる。たとえばタヌキという単語を知っている者が、ある地域には一人もなかったというなどもその一つである。単語はまるっきり学ばなかった場合もあり、知っていたが忘れて伝えなかったという場合もあり得る。東国のタヌキもその一例であるが、西国においてはその反対に、ムジナという語を使わぬ処もあるかと思う。二つの言葉の内容の異同を明らかにしようと思えば、何としてもその二つのもののともに存する場所について調べなければならぬ。一方は本でまたは小学校で教えられた語、一方は村で親たちが使う語というのでは、第一に比較の条件が備わらぬのであった。
タヌキ・ムジナの二つの名が、ともに民間に伝わっている土地も決して少なくはない。そこへ行って二つはどうちがうかと尋ねてみたら、いやまったく同じだという者はおそらくないであろう。自分は気を付けて各地の話を聴いていたのだが、遠州の気多の山村などでは、ムジナは狸のこう経たものだというそうである。これはむしろムジナという名だけは知っていて、それが土地にいるどの獣のことになるかをまだ突き留めていないからで、ちょうど関東のタヌキと正反対の場合であろう。