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ねことしょうぞうとふたりのおんな

猫と庄造と二人のおんな

谷崎 潤一郎

「改造 新年号 第十八巻第一号」1936(昭和11)年1月1日<br>「改造 七月特大号 第十八巻第七号」1936(昭和11)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,020 字 · 131 页

青空文庫

此処の家では、亭主が女房の好き嫌いを無視して、猫を中心に晩のお数をきめていたのだ。そして亭主のためと思って辛抱していた女房は、その実猫のために料理を拵え、猫のお附き合いをさせられていたのだ。

「そんなことあれへん、僕、いつかて自分が食べよう思うて頼むねんけど、リリーの奴があないに執拗う欲しがるさかいに、ついウカッとして、後から後から投げてまうねんが。」

「云いなさい、あんた始めからリリーに食べさそう思うて、好きでもないもん好きや云うてるねんやろ。あんた、わてより猫が大事やねんなあ。」

「ま、ようそんなこと。………」

仰山に、吐き出すようにそう云ったけれど、今の一言ですっかり萎れた形だった。

「そんなら、わての方が大事やのん?」

「きまってるやないか! 阿呆らしなって来るわ、ほんまに!」

「口でばっかりそない云わんと、証拠見せてエな。そやないと、あんたみたいなもん信用せエへん。」

「もう明日から鰺買うのん止めにしょう。な、そしたら文句ないねんやろ。」

「それより何より、リリー遣ってしまいなはれ。あの猫いんようになったら一番ええねん。」

まさか本気で云うのではないだろうけれど、タカを括り過ぎて依怙地になられては厄介なので、是非なく庄造は膝頭を揃え、キチンと畏まってすわり直すと、前屈みに、その膝の上へ両手をつきながら、