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ねことしょうぞうとふたりのおんな

猫と庄造と二人のおんな

谷崎 潤一郎

「改造 新年号 第十八巻第一号」1936(昭和11)年1月1日<br>「改造 七月特大号 第十八巻第七号」1936(昭和11)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,020 字 · 131 页

青空文庫

なるほどそれもそうだけれども、彼女と福子の父親が手を貸さなければ、庄造一人であの女房をいびり出す勇気はなかったと云うのが、間違いのない事実であった。

いったい母親と品子とは、どう云うものか初めから反りが合わなかった。勝気な品子は、落ちどを拾われないように気を附けて、随分姑には勤めていたけれども、そう云う風に抜け目なく立ち廻って行かれることが、又母親の癪に触った。うちの嫁は何処と云って悪いところはないようなものの、何だか親身に世話をして貰う気になれない、それと云うのが、心から年寄を労わってやろうと云う優しい情愛がないからなのだと、母親はよくそう云ったが、つまり嫁も姑も、孰方もしっかり者だったのが不和の原因になったのである。それでも一年半ばかりの間は、表面だけは無事に治まっていたのだったが、その時分から母親のおりんは嫁が面白くないと云って、始終今津の兄の所、庄造には伯父に当る中島の家へ泊まりに行って、二日も三日も帰って来ないようになった。あまり逗留が長いので、品子が様子を見に行くと、お前は帰って庄造を迎いに寄越せと云う。庄造が行くと、伯父や福子までが一緒になって引き止めて、晩になっても帰してくれない。