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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
わたしのつめてやる弁当をもって只今出かけたところです。
咲が来て下旬一杯居りましょうが、その間に、家の大半をあけわたすための片づけをやる由です。
達治さんが折角上京するのに、ガタついて気の毒ですが、それでも妙にせまくるしく暮すようになってからよりはいいだろうから、本月下旬だといいと思って手紙出しました。大体の方針では、今わたしの使っている二階全体と蔵の前の六・四半と、洗面所、便所、湯殿と一かたまりに仕切って、そこで台所も出来るようにして、私と国とが暮し、表側全部を開放することになりましょう。この仕切りかたですと、下の二間で、国咲がまとまれるし、上は私が、私一人で勉強もし、ねることも出来、一寸した一人の食事は出来るし、けじめがあって、ようございます。わたしは、やがては、もっと時間をとって仕事も勉強もしとうございますから。一人のときは主として二階で書生流にやれたら手間も省けてうれしいと思います。疎開の家族は、気が立っていましょうから、受入れる側が普通の家庭の形式を保っていて、夫婦、子供と揃っていたりすると、細君同士、旦那同士の感情がむずかしいでしょう。