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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

生憎むし暑くて体がもちにくいし。おなかをわるくしていて、この時候では大儀なことです。丈夫なひとでも、あれでは大抵やられるのよ。疲れのため安眠出来ないのではないかと思います。わたしはもとそういうことがあるとは知らなかったけれど、ひどく病気してから夜風呂に入ってさえ、眠れなくなることがあるようになって、そういうときの工合わるさ、御同情いたします。どうぞ、どうぞ御大切にね。

咲ひさしぶりでしたろう? 二十三日に出て来たのよ。六時すぎてしまって、さてこれからもし御飯炊くのだったら閉口だとふらふらになって入って来たら、台所の外のカマドで火をたいているのが咲だったので、わたしはうれしくて、ウームああちゃん! よく来てくれたとうなってしまいました。あっこおばちゃん! どぉうした? 二人が抱き合うような「感激的場面」を展開しました。〔中略〕二十四日にはどうしてもと思って来たのですって。こういう思いやりのあることを咲がやってくれるからどうやらやってゆかれます。あなたも咲を御覧になって、やはり似たようなことお感じになりましたでしょう。咲と話したのよ。あなたは輪廓だけにしろ、私の暮しのあれこれを御存じなのだから、ああやって咲がいるの御覧になれば、マア、その調子ならユリもやれるところもあるだろうとお思いになるでしょうって。