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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

そして、こんな話をするの「こっちじゃ立鍬を使わないんだね。それじゃいかにもハア腰が痛そうだ。」臥鍬の、ずっと柄のひくいので、二重になってやるのよ。「この辺の地質じゃ立鍬は、ハア駄目だね。みんなこれだね。立鍬なんか使ってると、のんきだって云われやす」

けれども、来るとき感じたのは、東北の文化的向上とでもいうか、昔は宇都宮からは、乗客の空気も言葉も服装も全く違って一段と暗くなりました。こんど来てみると、全くそのちがいは消えていて、女の子の服装だって髪だって東京とちがいありません。ちがいは健康そうだ、という丈よ。駅の女の子にしろ同じ制服で。違うといえばアクセントぐらいのものよ。宇都宮から隣りにのった女の子はタイピスト学校に行っているのですって。宇都宮に二つあるのですって。うしろの座席には、芝浦の工場に徴用に行っている福島からの人が何人かいて、盛に配給食の比較をやっていました。こうして、人々の動きは大きくなって、攪拌されているのだと痛感しました。熟練工らしい人々は、学徒勤労を批評的に見ますね。学生は労作も能率も浮かす分を念頭に入れず、純奉仕的だからうるさいのよ、きっと。