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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
一緒に、新しい頁にうつってゆくときめきがあります。
いろいろと空想し、それを自分で空想と思って空想するのですが、一等の魅力は、そういうところで少くとも半年は落付いて暮して、その間に今の渇きがしんから治るまで、勉強することです。人とつき合うことは殆どないでしょうし、一度から一度へと御褒美をたのしんで、一心に勉強するのは、どんなにいいでしょう。あとの半分位は、ゴタゴタした東京で、もまれて、埃をあびせられて、よかれあしかれ、今日につよく接触して、又次の半年は、巣ごもりで暮すの。うんとうんと仕事をしたいのよ。ある日に、わたしが、しんからあんぽんブランカとなり終せ、気持いいこと、美味しいことしか思わないでどれ丈か暮しても、それは十分これ迄の勤勉の御褒美として天地に愧じるところない丈、うんと仕事しておきたいと思う次第です。賛成でしょう?
二日の帰りみち、わたしは疲れたのと感銘に打たれたため、よそめにはすこしぼんやりした風で、しきりに考えました。人間が幸福を感じる奥ゆきは、いかに深いものか、云いかえれば、ある人を幸福にしてやる、ということには、いかに、ピンからキリまで、その方法があるか、ということについて。