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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

ちょいちょいした時間に、このひとの日記をよんで居ります。ごく内面的な、そして仕事と連関をもった日記で、今のわたしには、調子(本のたち)の合った読みものと感じます。自分の中に徐々展開するものが感じられているものだから、キャスリンの内部世界と全く違ったもの乍ら、小さい蕾が一つ一つ枝の上で開いて行くようなこまやかな、真面目な、地味なそのくせ、胸の切ないように活々した感覚のリズムが、このひとの日記のこくのあるところと調和して、いいこころもちです。たまにこういう読書があるのね、逆に見ればその本をよむより、自分をよんでいるという風な。「伸子」のとき「暗夜行路」がそうでした。三四年の間、机の上にある本と云えばあれきりで、やっぱりリズムが合ったのね、それによって自分がよめたのでしたろう。旦那さんの批評家ジョン・ミドルトン・マリは、善良な男らしいけれども、キャスリンは、自分と全く似ていると云っています。これはつまりキャスリンが作家なのに、作家に似た批評家というのはどうかしら、ということになるのね。キャスリンは感受性が柔軟で繊細で、心情の作家だったようです。彼女が永い間、内へ内へ感じためるだけでまとまって表現しかねていたものが、愛弟の戦死によって、一つの焦点を与えられ、ニュージーランドで暮した生活の再現に集中してから、いい