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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
プルタークについても、いつか云っていらしたことは真実ね、多くの場合プルタークはそれを本当に理解する丈生活経験を積まないうちによまれたぎりのことが多い、と。プルタークはあれを、いくつの時分に書いたのでしょうか。プルタークの尨大な頁の中に鏤められている珠玉が、生々しい感動としてわたしの日々の中へまで反映されるようなときがあろうとは、実に予想いたしませんでした。昔トルストイの「戦争と平和」を菊版の四冊かにして出したりした国民文庫の中にプルタークがありました、それがわたしの見た初めでした。それから、まるで字引よりこまかい字で二側にキッシリ印刷した英文のプルタークが、今も埃をかぶって棚にあります、建築字典などと一緒に。どうもあの本をよんだ人がいたと思えないわ、あの字のこまかさでは。買ったのは父か省吾という弟の人かもしれませんが。プルタークは、詳雑でありながらも、キラリとしたところは感じた人間なのね、キラリとするところがうれしくて荒鉱のところもとりすてかねたのねきっと。
わたしはあなたが『風に散る』の第二、第三、とおよみになるのをたのしみにして待って居ります。