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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

のちに又かけましょう、ねる前によ、勿論、御安心下さい。

今年の正月には恒例の寄植の鉢もございません。何か、花と云えないようなカサカサのものがちょぼっとありますが。

だからことしはいい花を上げようと考案中です。題だけはもう読みました。指頭花というのよ、ちょっと珍しい題でしょう、われら愛誦詩の作者のものですから、よく読んだら、きっと素晴らしい迫力があって、年頭のうたにふさわしいものでしょうと思います。いずれ御披露いたします。この詩の連作に、雪は花びらに溶けて、というのもございます、御存じでしょう。再び冬はめぐり来ぬ、あはれ、わが春ある冬ぞめぐり来ぬ、といううたい出しです。薄くれなゐの花びらに、ふる初雪のさやけさよ、とつづいていたの、ね、では又。

十二月二十六日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

十二月二十六日

まだ午後二時だのに、日ざしは少し赤っぽくなって斜光の工合がいかにも真冬らしゅうございます。きょうはそれでもいくらか寒気がゆるやかです、きのうも、ね。三四日前何と冷えたでしょう。風邪をお引きにならなくて何よりです。わたしの風邪も、とつおいつ式ね、わるくはなりませんが。