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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
十九世紀におけるアメリカの宗教復活の波とはちがったうちかたをしているように思えます。こういう時代の日本の科学性の一歩の目ざめ。それから、封建崩壊期にオランダ渡来の新教の形式尊重を脱した十九世紀の近代科学の摂取、このうつりかわりがいかにも面白うございます、日本の理性の覚醒の過程として。大化時代には、内在的であった日本の精神の可能が、思考の様式を学んだように思えるのは違っているかしら。わたしはせまいマスの間に、しねりくねりと身ぶりをした文士的小説はほとほと書く気が失せました。小説を愛する(文学というべきね)こころの本源は、人生へのつきない愛であり、其は、つきつめたところ、いかに生きるか、そして生きたかという厳粛な事実に帰着いたします。そこにこそ、尽きないテーマがあり、つまり人類のテーマがあります。テーマの本流に、作家は可能なかぎり、力をつくして近接すべきです。日光は潤沢ですから泡沫にもプリズムの作用から七色の彩を与えるけれども、それは泡沫が美しいのではなくて、光線はどんなに公平かということの美しさですものね。わたしは、テーマの本流に身を浴したいのよ。