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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
でも、考えるとすこし笑えるわね、観念的というようなことは或る特別な人間にだけ、かかわりあるようにふと思って居りますが、安心というものもすこし似たところがあるのかしら。それは勿論根拠はあるようなものだが、あんまり比較にならなくて、ともかくマアそう考えつきました。
全く、時は遅くても且つ迅い、ということを痛感いたします。生活のテンポが時間という鞘から抜けて走ります。新型ドン・キホーテとはうまい表現ですね。この春をうまく合理的にすごしたらきっと丈夫さが増しましょう、しかし眼はよほどゆっくり思っていなくては。島田へ行ったらうんと早ねして、午前中起きていとうございます。
十三日の誕生日は、鷺の宮へ行ってすごします。泊らず。あなたのお祝いは何を頂きましょうね。ビオスボン届いて? あれでもボンというからにはボンボンなのね。そう思って、とどけました。わたしのボンボンは本当にまがいなしの Bon! Bon! で、あれは不思議なボンボンよ、みると。こっちの体じゅうが惹きこまれてしまって。十三日には、心祝いに、読み初めをいたします、第二巻から。又はじめに戻ると、こわれた時計みたいにグルリグルリ針があと戻りしてきりがないから。