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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
用心ぶかく、軽井沢辺で、芋でもかこうように作品をかこって繁殖させていたところで、芋は遂に芋よ。だってそれは芋が種なんですもの。家というものは、藤村が或程度かきましたが、又新たな面からのテーマです。ああいう「家」のように伝統の守りとしての継続の型ではなく、それが変り、くずれて、新たなものになってゆく過程で。では明日ね。
[自注6]眼が十分でない――一九四二年の夏、巣鴨拘置所で熱射病で倒れて以来、視力が衰え、回復しきらぬことをさす。
三月二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
三月二日
きょうは又ひどい風が立ちます。春はこれでいやね、京都はこんな吹きかたをいたしません。島田辺もそうでしょう? 風がきらいだからこう吹くといやね、外出しないですむので大仕合わせですが。
こんどは大変かりかたになってしまいました、二十一日、二十三日、そしてきのう届いた二十九日の分。
「ドン・キホーテ」のこと世田ヶ谷へきいてやってじかにそちらへ返事をたのみました。あの作品はほんとにそうでしょうね、そしてその男らしい笑いの中には、あの時代の頭をもたげた市民精神の強壮さも粗野さもあることでしょうし、罪のないひどいあけすけもあるわけです。