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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
今は人々が、ひと通りの気のよさ、親切、教養などの底をどしどし抜かれていると思います。そういう一応のもののよりどころない口約束みたような本質、一定の条件の限りでの礼儀のようなものが、皆たががはずれて、ひどい有様ね。親切というこころがいつしか本人も知らないうちに、利用価値にのりうつっていたり。こわいことね。信義というようなもののめずらしさ。
島田へは、行かないときめたときおみやげ送っておきました、母上と友ちゃん、草履(いいのよ、なかなか)達ちゃんへはしゃれた紙入れ。子供たちに積木と本。野原へは、二人に草履。冨美子は卒業ですから、本。役に立ちそうなのを集め八冊ばかり。かなりのものよ。岩本には薬の世話になるから先生に紙入れ(いかにも年輩の校長先生向なの)奥さんに帯あげ。上の娘帯どめ、下の娘机の上の飾り、男の子切りぬいて作るグライダー、という次第です。来年どうなるか分らないし、私は益※(二の字点、1-2-22)貧乏でしょうから、ことしは、おみやげをけちけちしないで準備いたしました。小包あけて、きっと不平な人は居りますまい。
この頃鉄道便をうけつけませんから誰彼なしに小包つくるため、ユリお得意の小包作りに紙がありません、売らないのよ。