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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

囀る声はこんな天気の日の外気の中にきくのはわるくありませんけれど、それよりも時々山鳩や赤腹や野鳥が来ます百舌鳥も。その方が林町らしくて面白うございます。そうそうこのお盆に南瓜の種が五粒あります。これは隣組配給よきっと。この週は南瓜週間なのですって。週間の推移様々なりと思います。わたしは南瓜をすきと云えません、けれ共ことしはちゃんと植えます、前大戦のドイツはインフレーション飢饉で二十万死亡しました、それは御免ですから。このあたりの隣組は全くわが家専一で、家の中のカラクリは垣根一つこちらからタンゲイすることは不可能です。したがって飢じい思いをしたり、ひからびたりするのはお宅の能なしということなのよ。凄いでしょう? 飛び散ってしまえば其までながら、さもなければ、私はまだまだ小説を書かなくてはならないのだから、南瓜でも豆でも植える決心です。それでも、こんなものはかよわいものですね、ドシャンバタバタの下に入って、猶も青々しているなんて芸当は出来ません。そう思うと、土の中に埋めるものはノアの箱舟のようになります。ノアはあらゆる家畜一番いずつを入れたが、日本のブランカは、焦土に蒔く種も一袋という風に。