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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

九日から二十五日までにさばいて警察に届けるのですって。下駄やの斜向うに菊そばがあります。ゆうべかえりにそこ丈明るくて男や女がワヤワヤ云っていたの、何かと思ったが、見ると今晩軒という札が出ていて午前十一時より千五百人売切れとあります。ホーレン草の束を運びこんでいます、「今晩軒て何が出来たんでしょう」「雑炊です」「まあ菊そばが今晩軒になったの」「いいえ、代が変って菊そばは引こしちゃったんです」あの下の方のところには土間に板の床几が並んで居ります、ホーレン草の入った雑炊売るのね。附近の人は大助りでしょう。外食券なしで買えるし、食べさせるのですから。いずれはうちも十一時までだから十時半などと云って団子坂の上まで列に立ったりするのでしょう。

魚やから戻って、これから一寸することがあるの。小遣帳の整理です。小遣帳たるや、この私に二冊もあるのよ台所用。自分用。この頃は、出たところ勝負で買っておきたいものがありますから。そしてこれは、こんなものいるのかというようなもので。例えばね、この間、そこの帰りテープ買ったのよ、ゴムの。下着用の必需品。これが立売りしかありません。