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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
うちは垢ぬけました、それは心のあぶらがゆきわたったからよ。この間国にそのこと話して「気がついている?」と云ったら「そう云えばそうだね、不思議だ」というの。「人が住んで荒らす生活だってあるよ。つまり、姉さんは相当なものなんだという証拠だけれど、わかるだろうかね」と云いました。「そうらしいね」と云って、「うまい、うまい」と里芋をたべました。この人には里芋のうまさの方から、姉さんのねうちがつたわる口ね。ともかくそういう工合で、この暮しに使い立てられては居りません、夏になる迄、これでやろうと思います、暑くなると買出しや隣組の月番の外出がこたえますから、そしたら方法を考えましょう、夏の暑さには抵抗力がないから。暑気負けは、どうしてもそうですね。その夏までに、又万事がどう代りますか。それに応じてね。
食事のことなど、御安心のためならば献立かいて上げていい位に思うけれども、わたしとしてそれは辛い心持なのよ、よう致しません。一言にして申せば、あなたの上るものよりも確実にいい食事をして居りますから。特にこの頃は。ですから、わたしのその心持を汲みとって下すって、どうかまかせて御安心下さい。