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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
細君が、すこし気を張っていて可哀そうです。子供二人は元気で、節造という三つの男の子はほんとに男の子よ、可愛くてそれには目尻を下げて居りますが。「どうもこの息子はユーモラスなところで親父まさりらしい」と云ったら、親父さんへへへとうれしそうでした。あなたにそのこと話したら、あなたはフフフフとお笑いになるだろうと云ったら、おやじさん、俄然もち前の笑い声でハッハッハと笑いました。こう笑うのが本ものよ。ね。
レントゲンのこと。こわがってなんか居りません、面倒くさいのよ。しかも、いいかげんのところのレントゲンなんてろくに映りもしないで。結核予防会へ行くのですが、それが面倒なのよ、面倒というのは通用いたしますまいが。日わりはこんなよ、月曜は歯イシャ、神田の方へ野菜とりにまわり午後じゅうつぶれます。火曜はそちら。水曜は分らないが、又桜田門かもしれないわ。面倒というのが、くせものめいて居りますかしら。こんなにしつこく日程なんか並べるのもくせもの?
疲れはそういうことからではなく、人事的紛糾の精神疲労や何かがまだぬけないところへ、生活条件が急変したからです。しかし本当に診て貰いましょう、来週桜田門がなさそうなら来週のうち、に。