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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

てっちゃんにも文学上のあれこれの希望ははなしました。わたしの書きたい小説はまあそろそろと、ね。

旅行は、どっちを向いても極端に困難です。けれども、もしこの月半ばまで待ってみて、どうしてもそちらへ行く手筈がつかなければ(青函連絡は一艘でやっている由)忙しくなる前に、こちらから島田へ一寸でもお見舞に行って来てしまおうかと思いはじめました。

達ちゃんの安否についてまだ御返事頂きません。丸山定夫一行十七名の移動劇団が広島の福やデパートに泊っていて、全滅いたしました。福やはわたしも知って居ります、あすこから電車で護国神社まで行った覚もあります。目下のところ一番気になるのは達ちゃんのことですから、どういう形にしろ忙しくなる迄に島田へ行くのも一つの方法と考えます。あちらに住むのは不便でしょう。子供二人にお母さん友ちゃんとわたしという組合わせでは、女である私はここにいると同様になってしまうでしょう。最悪の場合を考えても、やはり私はあちらに住まず、仕事を自由にたっぷりして、その結果で出来る丈お力になるのが一番よい方法と思います。岩本さんの娘が来ているらしいのね、文子というのはその娘さんのことなのね。