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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
うしろと斜前、横、爆弾でした。それぞれ小一丁もはなれて居りましょうか。
第二次、第三次と来たときまだ火が見えて心配し、電燈もとまり警報もきこえず月明りをたよりに土足で家じゅう歩きました。日大病院もやけました。相当の範囲ね。こちらの側は、団子坂の角あたりと、その線をのばしてすこし上へ上ったところで星野という家につき当る角がありました、あの一寸入ったところ位で止りました。
けさは疲れて八時前御見舞に来てくれた国男の友人に会ってから又、湯タンプをあつくして眠り十一時までぐっすり眠りました。千駄木小学校・駒中・郁文へ避難した人々が一時集っていて、こちらの前の通りの人通りは遑しゅうございます。
水が不足ね、何しろ乾いて居りますし。凍って居りますし。大体どういう風と分ったのはいいが、あんまり瞬間の判断も出来ない程の突嗟のことで、其には閉口ね。本当の塹壕生活ならいいが、こうして日常性とそういう異常性とが交錯した生活はこれから益※(二の字点、1-2-22)大変でしょう。こちらの組の米、味噌、マッチ類の配給所もやけてしまいました。今度の月番は大変でしょう、こちらは丁度昨日で終りました。