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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

今年は、お着になるものなど、怪腕をふるって、われ乍らびっくりものです。わたしは地道な人間で怪腕はよかれあしかれもち合わせないのですが、事一度裁縫に関すると、振う腕ごとに怪腕になるのだから凄じいわね。技術を習得しても怪腕に変化はいたしますまい、それはどうぞ御含み下さい。そういうことの器用人は又別でね、わたしのは、必要を極めてがんばって主張したという風な裁縫なのよ、あなたの針仕事を女性化したという程度ね、おそらく。でも、幸、わたしは、台所はしませんでした、何はしませんでしたというような消極人でないから、おそろしい綿入れだって何とか征服いたします、あなたとしては、時おくれやとんまや、その面だけがお気づきでしょうし、其は実もって尤もですが、わたしの昨今の諸事業征服は、そうそうすてたものでもないのよ、公平にみれば。気力でやりとげる的縫物でさえするのですもの(!)

最近材料をそろえて、鷺の宮へ行って足袋縫いをいたします、ついでにお風呂に入って、国男がいるから泊って来ます。昼間風呂をわかさせてはすまないし、夕方入れば帰るのが困るし。今市電十時で終りですから。