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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

七色八色虹の如く多彩であって、それはあらゆるよろこびと感動とのニュアンスに照り輝きます。或るときは渡る風にも鳴ります。そのそよぎは伝わって光か風かという風に色のすべてをきらめかせ、人の力でとどめることも出来ません。色と色とは云いようなく快い互の諧調を知っていて、ちがった色どりをもってくることは不可能です。その色がそこにあるのでなければ、この色はそこに生じないという、そういう工合の調和です。えにしの糸は、天のかけ橋、虹の色という調子のものよ、ね。しかし、ちっともそれは芝居にはならないわ、壮厳微妙ですから。大らかすぎ、精神において演劇発生史以前ですからね。芝居と講談にならないということは大変慶賀すべきことなのね。西郷南洲はあらゆる芝居と講談と小説のたねにつかわれるが、日本の建設のためにあれだけの仕事をした大久保利通は講談にならない、木戸も講談にならない、これは何事かを語っていますね、と、鷺の宮の小父ちゃん[自注2]の言にしては犀利なり。きょう、ずくんでいられていいお年玉頂いたと思います、ありがとうね。

[自注1]チジョサン――「中條さん」のこと。

[自注2]鷺の宮の小父ちゃん――壺井繁治。