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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

家の様子も十日の明方からすっかり変って、春木屋といううちにいる細君の実家の一家が五人ぞっくりと若い男の子女の子、母親が来て居ります。この一家は、いろいろのものを疎開し、御宿に住居をもって居り父親は仙台の方に鉱山をやってそちらに疎開する決心して居たので、比較的元気ですしあわててもいず、ようございます。田舎行までいるでしょう。

十日の明方には、もうバカンバンバンには辟易しているので恐縮していたら、そうでない方だったので勇気百倍、まして北風で向きがよかった上、北方上手に投弾されなかったので大助りいたしました。烈風でしたからよほど弾は流れ見ていると、殆ど横に吹き流されていました。主人公もいて(菅谷)屋根にのぼり見はりをして、ああいうとき屋根の上に男がのぼっているというのはいい心持です。となりの家では十三四の男の子がのぼり其でも一々下の母親に大体の方向を叫んでいました。男の子っていいことね。

うちでは非常措置として土蔵の地下室に菅谷のもちものうちのものなどしまい、すっかり入ったら二階の畳をはいで、グランドフロアにしきつめ二階が燃えても地下はいくらか助かるようにしました。