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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
03 一九三六年(昭和十一年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,453 字 · 101 页
半分ばかり終りました。書きながら私自身の生長も自覚されるような、そういうものを書いて居ります。よろこんでいただけるだろうとたのしみです。
きのう十国峠で採って来た秋の花をお目にかけたいけれど、せっかく花を入れてあげてそれがなくなってしまって居たりすると惜しいからおやめにいたします。押して色をうつしてあげるにはあまり鮮やかに咲いていて可哀そうなの。女郎花、撫子それから何というか紫のまるい花と白とエンジ色のまことにしゃれた花と。それがコップにさして机の上にあります。
私はこれから髪を洗います。そしてさっぱりして仕事をします。きのうはお暑かったでしょう。きょうはからりとしていて凌ぎよいが。――この手紙を御覧になる頃にはお目にかかります。
九月七日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
第十信 八月三十日から。
この頃私はこの手紙が日記のようなものですね。又くつろいだお喋り。親密な会話。頭の中でつきつめたことの独白――もう一人の自分に向っての。そういう風ね。私は自分の全生活の波、色、響をあなたのところへ一つものこさずつたえて、それでくるんであげたい。