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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
書かれてはじめて、それが存在し、自分やひとに働きかけて来るものとなる。在らしめること。そのためには碎心しなければならないこと。何と面白いでしょう。この感じは評論のような仕事で、私が最近経験した一定の段階までの成長で、却って小説とのちがいとして自覚されて来たものです。私はこの点がわかって、何だか作家として底がもう一つ深くなったようなよろこばしさです。評論のようなものでは私は疑問をつらまえて最後まで手を放さずその矛盾や疑問の発生点をつきつめてゆくたちです。そしてそれは、研究というか、語るというか、とにかく小説の在らしめてゆく感じとはちがうものであり、小説が何とそのようなものであるかを痛感させるのです。
評論風な勉強は、自然の結果私自身に向っても小説の水準の引上げを課すのも面白い。私は当分小説にかかりきって、在らしめる術を行います。これから私は事情のゆるす限り自然発生的にあれこれの仕事に手をかけず、一年の或期間小説をかき、その汽罐車のように評論をかくという風にやってゆきたい。カマだけ一つで先へ行きすぎてしまうと一大事ですからね。大きい重い荷物をひっぱってゆかなければならないのだから。