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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
私を努力させる力、私を生かしている力、それは何という根づよい強健なものでしょう。抽象的に書いて何だか妙だが、おわかりになるわね勿論。私が絶えず探し求めていて、自分を一層ひろげたり強めたり本ものに近づけたりする小さいキッカケでもピンと来たときどんなに私はあなたと共に其をうれしく思うでしょう。ありがたいとさえ思う。つまりこれらすべてのことは、私が比較的健康の工合もよくて、心が情愛に満ちていて、仕事にはり切っていて、その仕事を一つ一つあなたに、全く、実に、ほかならぬあなたに見て貰いたく思っているということなのです。こう書くと何だか暑い盛りに一層あつっぽい息をかけるようですみませんが、でもこれはあなたの不幸にして幸福な良人としての義務だから、生かしているものの義務だから、あしからず。
本のこと、差し入れのこと、皆お目にかかって申します。鶴さんたちの生活はいろいろむずかしさをもっている、しかしもし鶴さんが、どんな形になろうと、二人の生活を完成させて見せるというところに腹が据わればほんとにいいのだけれど。長くなりすぎるからこの手紙はこれで。
七月十三日夜 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕