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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
主観的なものでもない。愛しているという自分の感情をなめまわしているなんて、何て結局はエゴイストでしょう。(これは小説の中に考えていることとくっついているが)「海流」はチョロチョロ川がすこし幅をつけて来て、いろいろの錯綜もあらわれて来て、やや調子もでて来ました。面白いそうです。「雑沓」より進歩して来ているところもある。技術ではなく、現実に向う態度で、私はこの長篇を努力して書き終るとやっと小説における自身の今日の到達点を具体化できると信じ、本気です。
きょうは何となく愉しい。私もこれで案外しおらしいのだから、どうぞ呉々もそのおつもりで。これから仕事。では又。もう九時だからねていらっしゃる刻限ですね。どの窓だろう。お大事に。
七月三十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
七月三十一日 午後 90゜近いあつさ。第二十二信
二十七日づけのおはがきを二十八日に拝見しました。この二三日じゅうにとりにゆきましょう。何だか今年の暑気は体にこたえること! その後いかがですか。私はもうおなかの工合も直って汗をふきふき仕事しているから御安心下さい。
富雄さんのところから返事が来ましたから、又その内容をおつたえいたします。