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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

『胃腸病の新療法』日野お送りしますが大したことなし。終(第二)

八月十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(ダマスカスの細工物「ランプ」の絵はがき)〕

八月十七日、きのうの午後太郎と一緒に本郷の南江堂へ行って、本を買いお送りしました。私は何というあんぽん! ほんとに何という。外ならぬあなたが体のために本をよむことも注意していらっしゃるということの意味が、やっと今になってはっきり判ったなどというのは。本当に御免なさい。私はこれから本をよまぬあなたのために、毎日一枚ずつ小さいお喋りをのせたハガキをかくことにしました。仕事をはじめる前の挨拶として。

八月十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(トルコの細工物「大ざら」の絵はがき)〕

八月十八日、朝。

御機嫌よう。工合はいかがですか。きのうは九三度二分ありました。濡椽の外の柱にさち子さんが蒔いた朝顔の花がこの頃咲き出し今も咲いている。きょうは、小さい小説の仕事にかかります。元フランスの首相であったブルムが「結婚の幸福」について論文があり、それは男も女も多夫、多婦的傾向をもっているのだから、或年齢までそれでやって後結婚すると幸福だと云い幸福を平凡と休安に規定しているところは彼の進歩性を語っているではありませんか。