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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
女の方では瀧田さん時代の人俊子、千代、私、時雨など。いかにも東京会館向なり。蘇峰、如是閑、しきりに瀧田の思い出のなかに私の名を引き合いに出し、何だかてれてしまった。何も瀧田の人物鑑定眼を裏づけるに私だけをとり立てて云うには当らないのですからね。好意からとわかっているだけてれくさかった。
かえりに俊子さんのところに一寸よって喋って、十二時になると円タクの流しがなくなりガレージから反対の方角に行くときは猛烈な価になるのであわててかえって来ました。
ところで、うちのおひさ君、きのう日向に自分のふとんを干しました。ポンポコになっているのをかついで二階から降りてゆくから、おひささん、そのふとんで今夜早くグースーねるの考えるとうれしいだろう? と云ったら、ええ、うれしくて黙って居たいようだ、と云った。何という感情表現でしょう。実にその気持端的にわかる。私は非常に感服しました。
きょうはこれから勉強して、来るべき文学について何か書く。これは一口に云えぬ題です。文学に近頃場所をとりはじめているルポルタージュというもののリアリティーが来るべき時代の目でどう見られるか、又ルポルタージュの真価とリアリスムの問題もあり、そのことをすこしつきつめて見て見たいと思います。