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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
浅はかにそれにひっぱられて喋くっているのでしょう。精神というものが低い。戯作者気質が「当世書生気質」で終っていない。そこが日本の文学の美の内容をひきずりおろしている。或壮麗な恍惚にまでたかまる悲劇。歓喜に迄貫通する悲劇というものの味いを生活の中に持して行くだけの精神力のはりつめかたをもたない。
私は音楽も絵にも文学にも実にこの強靭きわまりない高揚と、それと同量の深いブリリアントな忘我を愛するのだけれども。私の仕事が文字を突破してそこまで横溢することが出来たらどんなにうれしいでしょう。輝きわたる人間の真情のままが躍動したら。
今夜は今に寿江子がここへよって、七時から新響の定期演奏をききます。
(二十五日になってからの分)
昨夜はベルリオーズという人の(クラシック)夢幻交響楽というのがなかなか面白かった。題の如きもので、情熱的第一楽章。円舞曲(舞踏会)第二楽章。野原での風景。絞首場への行進曲。悪魔の祭日の行進曲。大体テーマは(文学的に)分るでしょう? このひとは楽器のつかいかたが面白く、太鼓のつかいかた(雷)として実に芸術的につかいヴェートウベンのパストーラルの嵐の太鼓のように説明的でない。