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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
本年は私の文筆的生涯のうちで、決して尠い仕事をした年ではありませんでした。所謂拙速的仕事もしなければならないこともあったが、私の拙速は決して投げたものではなく、最上に最速にという工合であったから、一年経って顧ると、自分が一番能力を発揮して一つの仕事をまとめ得る時間、用意それぞれが評論ではこんな風、小説ではこんな風と、技術的に理解を深められました。
専門家としてはこういう自分の性能を知ることも必要であり、そのためにはやはり一杯にフルにやって見る必要がある。のろのろしかやれないもの、或程度のスピードを出してよいもの、ひとりでに出るもの、だがスピードの出た頭の活躍がどんな傾向を人間として作家としての私の中に蓄積してゆくか。こういう点をもやっぱり研究して見る必要がある。
私は永年極めて自然発生的に内部の熱気に押されてばかり仕事をして来たから、この頃いろいろこんなこまかいことも意識にのぼって来て、建築的に仕事を考えるようになったのを面白く思います。
一水会と言う絵の会に、昨日光子さんと寿江と三人で行って、有島生馬の絵を見てアマチュア芸術家の陥るところは恐るべきものであると感じました。