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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
ありがとう。いろいろな心持というものも、こうして字にかいておけばこそ一層はっきりとした存在となって確実に実現するのは、実に妙ですね。私はこのごろ、仕事にふれてこの事実を深く感じている、もし文学として書かれていなかったら、この人生の人間性、情の力や美の錯綜はどうして今日だけの蓄積として人間の歴史につたえられるでしょう。そして、私たちはまだ実に実に少ししか書いていない。そう思うと勿体ない。歴史に新しく加えるべきものは本当に多いのに。
この頃は急に空気が乾きはじめて、皆喉がカラカラして、鼻の奥がかわいて苦しいが、ずっと大丈夫でいらっしゃるでしょうか。私は夜中、急に喉がいりつくようで目をさますことがある。
昨夜は『中公』の随筆を十枚かいて(くちなし)、これから例の私の荷物である今日の文学のつづきをかきます。今、能動精神の文学の声がおこったところです。フランスのそういう時代のもっているものと、こっちのとを比べてなかなか意味深い。この仕事は十三四日に終らねばなりません。
全く今年は沢山仕事をした。最も活動したものの一人です。しかし、今年の仕事ぶりは忘れることが出来なかろうと思う。