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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

古典に対する私の理解力については御懸念は決して決していりません。私はここで又ここらしい激しい波浪の間に在るのです。船は小さいと云っても、近代科学の設備を怠っては居りません。私は小さい造作がいかに科学的かということが、今日の価値であると信じているのですから。

ジイドは、その作家的矛盾を自分から合理化すべきではなくて、ジイドが真に誠実であらんと欲するなら自分の観念的な誠実ぶりのポーズをきびしく自己批判すべきであり、その点で与えられる批判を摂取すべきであることを書いたのです。無電で小松清とジイドが喋ったとき批判はあっても愛する心にかわりはないと云った由。まだこの作家には本当のところが会得されていない。人間は自己満足や陶酔やのために自分の愛を云々するのではない、新しい、より高い価値を現実のうちに齎すことこそ愛の実証だのに。

ところで、この印はお気に入るでしょう。

一月二十六日のお手紙で、あなたが万年筆のおくりものについて書いて下すったその手紙の宛名の字です。検印用です。残念なことに竹村書房から出る小説集には間に合いませんでしたが「昼夜随筆」の方には間に合うでしょう。