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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
これはこれとして。今年の春は、本が三冊も出て、傍らものも沢山かき、賑やかな時です。しかし、執筆のレベルは一つよりは一つへと高まらなければ意味ない。昔よりずっとずっと勉強です。又自らちがった形で。
私は今年の記念にそしてあなたが三十歳におなりになったお祝いに、私たちの蔵書印をつくるつもりです。もう自分から本を売るようなことはしないから。お体をお大切に。皮膚がゆるんでカゼを引き易いからお大事に。
三月五日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 目白より(梅の花の写真の絵はがき)〕
三月五日 金、春の北風。
きのうは半紙のお手紙をいただきうれしく早速返事をさしあげました。昨夜は国際ペンクラブの大会でアルゼンチンへ行った藤村の歓迎会へよばれ、芝公園の三縁亭という珍しいところへゆきました。
上野の精養軒のようなガラリとした、もっとオフィシャルな感じの店で、会にも文芸コンワ会の代表、国際文化振興会の代表等出席。藤村の挨拶は世界の大きい波に一寸でもふれて来ただけ、作家らしいものをよい意味でもっていました。きょうは下の四畳半へ勉強部屋をうつし、夕方太郎が汽車ポッポ見物に来。
三月七日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 目白より(封書)〕