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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

私は、林町のうちの睦しかった、その性質とここの人たちの睦しさの性質とを考え比べて見て、斯ういう一家の仲間に加われる自分を仕合わせな者だと深く感じます。そのことは、深く、深く感じます。あなたは、本当に立派な御両親や弟たちをもっていらっしゃる。心からおよろこびを申します。こういう心持の暮しというものは、人工的にこしらえようと云ったって出来ぬことです。全体の気分がね。私は、お父さんの扱われていらっしゃる様子を見て、親切とはかくの如きものと感服している次第です。単なる丁寧ではありません。いろいろ私は感動いたします。

家の財政のことは、お母さんから詳しく伺いました。丁度二月の七日に講の整理がついて、お祝をなすった由。十日ばかり経ってお父上がおたおれになったのですが、やはりよっぽどの御安心でしたのです。こちらの家は、今はすっかりこちらの所有になったわけで、二階などすっかり畳がえが出来、雨樋も壁もさっぱり白く手入れされ、家の中は、一つの清潔で静かな活気に充ちています。お店の方も、明るくなって居る。野原の方はこちらのように手堅く行かず、あすこは全部売却して、Tさんのいる、広島の方へ行こうと云っていられる由です。