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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

そこの職工さんたちの住居払底で、虹ヶ浜の小さい家はこの頃よくふさがっているのだそうです。島田の高山(呉服屋の隣り)は石油とギャソリン専売権をもって居り、うちは多くそこの仕事をする模様です。今度ガソリン一ガロンにつき五銭価上り、一カン二十五銭高。うちの車は一日に一カン位入用の由です。運賃を今のままでは引合わないという話がでています。うちの車庫は、店のとなりの方。もと製材のあったところを車庫にして、となりを木炭倉にしてある。きのうその辺をみていたら、店の前で近所の女の人たちがお母さんと私をつかまえ、かどぐち社交がはじまって、くすぐったかった。ここは全く小さい町気質ですね。言葉にしろ。河村さんの娘が高森の写真屋に嫁づいたのでその写真やに六日に来て貰って、ここの一族、野原の皆が写真をとります。そしたらお目にかけましょうね。

汽車の音は賑やかなものと思っていたら、この辺は小駅であるから一種寂しい心持を与える。汽笛が山々に谺する。ギギー・ゴトン貨車の音など特に。少年のあなたはその響をどんな心持でおききになったろうと思います。きりなしだからこれでおやめ。

〔原稿用紙に書いてある手紙の欄外に〕