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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

伯父さん口が利けんようになったから、多賀子をかえしてくれ云々。氷と氷枕を買って戻れ。

達治さんが丁度いて、私は心配だから一寸様子を見て来て注意することがあればして上げたいと、トラックで三人でかけました。冨美子をたった一人の対手で伯母さんはあわてていらっしゃる。中庭を隔てた日頃のお寝間に行って見ると、一目で昏睡であることが分りました。やがて医者が来て、瀉血を五勺ほどし、尿をとり、血圧を低めるための注射をしました。そして小一時間の後かえったら、激しいケイレンと逆吐が起りました。その時からずっとお顔の様子がわるくなった。私は富雄を呼ぶこと克子を呼ぶこと等一時頃までいろいろお世話しましたが、どうも御容態が思わしくないので、次の日の朝、貴方に電報した次第です。十日の日は暖かった。伯父さんは上機嫌でひなたで竹の鉢植をこしらえるためにお働きになった。そして、夕方珍らしく飯がうまいと、五杯もあがり、あと、よそから来た餅を二つあがった由。そして、そろそろ湯に入ろうかというとき、急に右がしびれ出し、こっちへ電話をかけるよう指図をして自分で床へお入りになった。冨美子が枕元についていたら「おや、目が見えんようになった」