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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
ペキリと折りそうでこわくて。その上、私はインクをつけながら書くのが好きでもあるから今はインクを入れてないままつけて書いているところです。本当の書き初めを。金のベルトも何もないので軸が軽いし地味だしどうもありがとう。やっぱりペンになりました。先にもペンという話があったことがあったから実現してようございます。この字はやっぱりヒンクスのGですが鉄の方です。もう一つアルミのようなのがあって、それだと字がちっとものびないの。この鉄のでもひっかかります。小さい字のためには苦情がありませんが、原稿紙へ、しっかりと明瞭な字を書こうとするとひっかかる。
万年筆の歴史を考えるといろいろに面白い。私が生れてはじめての万年筆をもったのは、多分女学校の二三年ぐらいのとき、こわれたと云って父の呉れたものがはじまりでした。金のベルト飾りがついていて、今思えばウォータアマンでした。私は珍しくてうれしくて、それを学校へもって行って作文のときだけつかいました。ところどころにポタリとインクのしみをこしらえながら、それでもうれしかった。次の万年筆は、初めて自分が原稿料というものを貰ったとき、文房堂でやはりウォータアマンを買いました。