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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
それから九時三十分か四十分まで待って、パチパチと話して、それからかえり。前後二時間―三時間です。十一時ごろはかえれます。
この家は、鉄道の柵の方から自動車が横通りまで入り、門から横通りまでは一丁ぐらい。その点は便利です。表の大通りまで三丁位で、そこからもひろえる、この間うちやっていたように。勿論朝八時すぎにはなかなかありませんが。どうしても歩くしか方法がないところとなると或場合は却って不便です。ここからは、先頃のようにおなか押えているときでも行けたが。あれが歩くきりだったら出られませんでしたね。きっと。目白タクシーというのが表通りにあって呼ぶと角まで入ったから。
寿江子は雪景色見物かたがたこの天気に又家さがしです。きょう、表のぬかるみがひどくて下駄の上までかぶるので裏へぬけて見ました。ああいう家々! もしどこかに火事が出たら人はどこへ逃げるのでしょう! 一人やっと通れる小路をはさんでつまった小家。ああいう家も、猶家作であるというのはおどろかれます。この日の出という町で小学校の子供が生活の苦しさから自殺しました。
今年は、去年の夏以来のおかげで出勤にもやや馴れ、気持もゆとりが出来、又沈み重ったところもあっていろいろたのしみです。