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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

そして第一巻はありますが。すこし手間がかかりますが、とりよせて見ましょう。どうかおまち下さい。

神田から十二月以来初めて戸塚へゆきました。実にこんなことは珍しい! おひな様でね、たあ坊に、小さい肴屋さんとおそばやさんの人形が買ってあるのを届けに。どうせ夫婦は忙しいにきまっていると思って行ったらやっぱり案の定。三時頃一緒に(稲ちゃんと)出て私はかえりました。春めいた日和でしたから、のーとした気で歩きました。

そちらもすこしずつ外の空気に当れるようにおなりになればさぞいいでしょう。でも三月は一番よくない。誰でもそうでしょう? 私は春は好きでありません、変に目がコクコクして、のぼせて。八重桜が咲きつづいているのを眺めたりすると、まことに重くて。どうかそろりそろりと願います。三月に入って、空気のゆるみがまざまざと皮膚に感じられるくつろぎは、私も実感をもって理解しました。わずかの、然し何という大きい違いでしょう。こちらの皮膚ものびるように思われます。

二十八日づけのお手紙、きのうの朝来て、御褒美がそこに来たようでした。お目玉については、甘受しなければならない場合がこれからも生じるだろうとは予想されます。