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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
と云ったから。其那挨拶をさせるだけでも大したことだと大笑いでした。おそらく犢の生涯に初めての挨拶ではないかしら。あなたの鼓舞激励、(プラス叱※(「口+它」、第3水準1-14-88)も少々)遂に犢に及ぶ有様です。夜になると、私がキューキュー云って、おそくなるまいとしているのも彼女を感激させたのかもしれません。そのキューキューぶりはお目にかけたいと思います。朝は大したことないわけですが、夜のキューキュー加減と云ったら。
御褒美はありがとう。折角の特製牛乳のこと故、ワイングラス一杯では足りません。あれは小さいものですもの。数杯のんだときにでも、私たちはたっぷり大きいコップでのむ習慣でした。大抵の疲れや風邪ぐらいはあれで癒ります。
詩譚、うれしかった。物語のこまかい節は不思議と覚えていて、題のはっきりしないときは妙な工合です、教えて下すってありがとう。二人の番兵たちの名はピム、パムでした。桜坊色の帽子をかぶって、雄々しい騎士のためにでなければ決して城門は開かず、円い楯をひかえて立っている姿はなかなか愛すべきです。ピムとパムとは、朝も夜も丘の頂に立って、ゆるやかな丘陵の起伏、微かに芳しい森林越しに海の潮ざいを聴いている。