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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
咲枝がお年玉にこしらえてくれた黄色いミカンのようなドテラを着て、きのう稲子さんがもって来てくれた綺麗な綺麗なチューリップの植込みを眺めつつ。しかもこのテーブル(枕頭台から引出すようになったの)の上にはお供えが一つあってね、丸く二つ重った形を、そして、上のところに、ちょいと松竹梅の飾りをつけた形を臥ながら横から見ると、まるで私のようなの。随分似ている、似ている、と笑っていたらけさになって榊原さんが、そのお供えの、丁度おなかのでっぱりのところに、小さい絆創膏を十文字に貼りつけました。上出来の傷のお祝に。そしたら、お供えは俄然生色を帯びて、まるで生きもののように表情的になって、うれしいようなきまりわるいような様子をして、お盆の上にのって居ります。こんなところらしい冗談があるものね、感心しました。
先生たちは元旦でも出て来て、明日入浴してよいということになりました。初めて普通の御飯をおひるにたべて、実に外科の仕事は、バイキンさえ入らず、体質異状がないと早いものですね。
あなたの名、私の名、新しい筆で大晦日の夜お祝箸の袋の上にかいて、先ずあなたのから食べ初めいたしました。