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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
本当にありがとう。化物退治が成功したうれしさが、あのお手紙に響いているよろこびで倍々になりました。我々の頭の上は、天気晴朗であろうとも波浪は決して低からずと予想される時期に向って、腹中の妖怪を退散させたことは全く満足です。しかもこんな好結果で。経済的な点からもよい時期でしたし。
きのうから、もうすっかり漿液の浸潤もなくなりました。きょうはどうかしら。まだ交換がないから、わからないが。今は小さな細長い消毒ガーゼをあてて、上から絆創膏を十文字に貼りつけ。
ここまで書いたら朝の廻診になりました。木村先生入って来て、バンソー膏をはがす。そのとき皆が、一寸どうかしらという表情を沈黙のうちに示す。すっかり乾いて居ました。「もうすっかりきれいじゃないか、もういい」そして、私が歩くとき胃の下の方がつれて、すこし胸がわるいようになりますけれどと云ったら、「横づなでしめたらいいでしょうな」すると、外科の婦長をしている大層しっかりものの森田さんという看護婦が「木綿を二つに折ってしっかり巻いておおきになると一ヵ月ぐらいでお馴れなさいますよ、寒いと傷がピリピリ痛いときがありますから真綿でもお当てになってね」