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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

それだからこそ、うれしさは何と透明でしょう。

ここまで書いたら不図思い出したのですが、私が虫退治したとき、切開後、肝心の一週間の経過をはっきりあなたにお知らせしなかったことを、あとで叱られましたね。くりかえし叱られたわね。ああいうとき、ああ仰云るのね。ああ、ああ。わかった。改めて、謹んで、ありがたく叱られ直していい気です。可笑しいこと。あのときは、叱られてると思っていたりして。そんな点で、ユリのバカと少しは癇癪もおこったのでしょう?

インク壺の絵ここからインクをつけて書いているインク壺。初めて小説を書いたとき父のくれたインク壺。茶色。

きょう、お母さんからハガキが来ました。二日に面会なさったところ四月九日に第一期の検閲が終って、それからはいつ出動命令がかかるかしれず、発表にはならないが近日かもしれぬ由です。明日御相談いたしますが、私は心配で気がせいて来ました。

十日一杯まで『中央公論』と『帝大新聞』の原稿があるのです。それをすまして、十二日頃島田へ行こうかと思いますがどうでしょう。そして、早いうちに隆ちゃんに会いとうございます。切迫するとむずかしくなるから。