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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
それをもって守りとするべきようなものがあると、固定的に考えなくても、心理の傾きとしてね。あるところまで高いところへ出て見ないと低いところの景色が見えない。それは生活上の様々なことでも云えて、興味つきぬところです。
感想、一つの方(『中公』)は花圃の書いた明治初年時代の追想の鏡にうつし出されている当時代の開化の姿の中にある矛盾や樋口一葉という人の、そういう貴婦人連の間にあっての境遇、芸術への反映というようなことと、先頃没した岡本かの子の人と作品とがその人の顔を見たときどうしても一つものとなってぴったり感じに来ない、その感じの妙なことについて。かの女の書く世界には、かの女らしい曲線、色、匂、重み、いろいろあるのだけれども、その人を見ると書くものがある空間をもってその人のまわりに立っている感じ。あれは妙でした。その人から生れたものにそういう妙な感じがあり得るでしょうか(そう表現はしなかったが)。これは稲ちゃんもはっきり感じています。其のことの中に、最後の書かれなかった小説がある感です。童女、童女と云ってね、その御主人が。もし大人の女の童女性というような言葉の好みを許すとして、そういうものが存在するとすれば、それは彼女の夥しい、客観的になり立っていない幻想的な、デカダンスな、非人生的な作品の間にだんだん小さく遠のい