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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
もう八年いる由です。そのお玉夫人が今年は六匹仔を産みました。去年は飼いようが下手ですっかりおびえさせてしまったので始末にこまり、遂にカナリヤ箱に入れて遠くへすてに行ったので、本年は手なずけてそれぞれ養子にやろうというわけです。今カナリヤ箱に仔が六匹入っていて、ときどきお玉夫人を入れてやる。店のところに出ていて、人にも馴れ且つもらい手を見つけようというわけです。よく手まめに母猫を出したり入れたりする、誰彼が。生きものを飼うのはこういう人手がなくては駄目ですね。戸塚の主人は、小鳥を九羽飼っています。それぞれの籠で。私にはそういう小まめさがない。あのひとは実際まめね。鳥の名はどれも相当美しいが。例えば瑠璃、きびたき、黒鶫などと。
こうして坐っていると、昼間のいやな山羊の声はしなくなって蛙がもう鳴き出して居ります。蛙の合唱期は永いものなのね、六月初旬は夜という夜が蛙の声で溢れるようですから。北海道へ旅行してアイヌ村の真暗な夜、谷地で(湿地で葦のような草の根のかたまりだけがとびとびにかたまって谷地坊主と云われて居、そこをつたわって歩く)五月頃蛙が鳴いていて、その声々が天地一杯という原始的な印象を思いおこします。